2024/11/21

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千住真理子 デビュー50周年 記者会見

千住真理子 デビュー50周年 記者会見

2025年にデビュー50周年を迎えるヴァイオリニスト、千住真理子の記者会見が11月20日、都内にて開かれました。司会は、本人と長年にわたり交友を深めてきたアナウンサーの森田美由紀さん。

森田美由紀さんのナビゲートで、千住真理子自身が50年のキャリアを振り返り、「10代、20代、30代、40代、50代、60代……さらにその先」についてたっぷり語りました。ここではその一部をお届けします。

千住真理子がヴァイオリンをはじめたのは2歳3ヶ月のとき。先に習いはじめていた兄の博と明を見て、自分も弾いてみたいと思ったそうです。

「兄たちもヴァイオリンは上手だったんですよ。博はすごく器用で、難しい曲もほぼ初見で弾けるほど。明はちょっと不器用でしたが、心に深く訴えかけるような演奏をしました。でも、ふたりとも練習が嫌いだったので次第に離れていきました。私は練習が好きだったので続いたんです」(千住真理子、以下同)

千住真理子 デビュー50周年 記者会見

1975年、12歳のときにNHK主催第1回「若い芽のコンサート」でNHK交響楽団と共演してデビュー。

「NHKホールのステージは広いので、中央まで大股で速く歩く練習をしました。本番ではスポットライトがこんなにも明るいのかと思い、目を閉じて弾きました。そのせいか、今だにステージ上では速足ですし、目を閉じて弾くと落ち着きます」

師事していた江藤俊哉先生のレッスンはとても厳しく、レッスンのたびに腹痛に襲われ、手足が震えるほどだったとのこと。日本音楽コンクールで最年少の15歳で優勝という成果を出したものの、中学3年間は人生でいちばん大変だったと語ります。

「勉強も大変だったので、テストで悪い点をとると“落第だよ”と言われ、勉強を頑張ると今度は練習ができなくなって江藤先生に怒られて……勉強とヴァイオリンの両立ではなくシーソーゲームのような中学3年間でした。日本音楽コンクールにしても、先生は反対だったんです。“すでにデビューしているあなたがコンクールに出て、1位にならなかったら、もう終わりよ”と。“じゃあ1位をとる!”と言って出場しました」

ヴァイオリニストとして活躍の場を広げていた千住真理子にはじめての挫折が訪れたのは20歳のとき。マスコミに「天才少女」と取り上げられ、その言葉がだんだんプレッシャーになっていったといいます。天才らしくするにはどうしたらいいんだろう? 1日14時間練習しても壁を乗り越えられない。心身ともに限界まで追い詰められた千住真理子は、ヴァイオリンをまったく弾かず、涙を流す日々を送りました。

「学校も音楽大学ではなく、両親も音楽がわかる人たちではなかったので、まわりに相談できる人がいない四面楚歌のような状態でした。でも、そんなときだからこそ、友だちや学校の先生、家族の優しさが心に染みたんです。生まれてはじめて“人”に出会ったような感覚でした。ヴァイオリンに触れない日々を送るなか、ホスピスの患者さんに呼ばれて病院で演奏したのですが、うまく弾けなかったにもかかわらず、“ありがとう”と涙を流して感謝してくださいました。そのとき、自分はなんてことをしてしまったんだろう! と思い、急いで家に帰って、ひとりでこっそり練習を再開しました」

千住真理子 デビュー50周年 記者会見

そして千住真理子は、辛いスランプの日々のなかでも決して自分から離れなかった作曲家として、バッハとイザイの名を挙げます。

「バッハはあまりに崇高で手が届かないけれど、祈りたいから弾いていました。イザイはバッハとは正反対で、ものすごく人間臭いところに惹かれました。悩み、苦しみ、ときには神に怒りをぶつけるイザイ。その音楽に触れていると、自分の感情がすーっと溶けていくように感じて、自分ひとりのためにイザイを弾くようになりました」

ストラディヴァリウス“デュランティ”と出会ったのは40歳のとき。しかし幻の名器を弾きこなすためには膨大な時間と体力が必要で、長らくデュランティ中心の生活を送りました。

「一時期は身体を壊して、点滴を受けないと演奏会ができないほどデュランティに振り回されましたが、今ではすっかり仲良くなりました。イメージした以上の音を出してくれる唯一無二の相棒です」

コロナ禍ですべての演奏会が中止になった期間は、森田美由紀さんら友人と励まし合い、Instagramでの発信もはじめた千住真理子。これからの10年先、20年先について尋ねられると「まだまだやりますよ!」と元気な返事が返ってきました。

「小さい頃から、年老いたヴァイオリニストの手の皺に憧れていました。なぜだかわからないけど、”皺の音がする”と胸が熱くなって、涙が出るんです。そんな音を奏でられるヴァイオリニストになれたらいいですね」

千住真理子 デビュー50周年 記者会見

ヴァイオリニストとして、人間として、素敵に歳を重ねてきた千住真理子の“音”が聴きたくなる会見でした。

文:原典子(音楽ライター/編集者)
写真:松尾淳一郎


千住真理子
《公演情報》
<プラチナ・コンサート・シリーズ Vol.17>
デビュー50周年特別プレ企画
50周年を前にイザイの深淵に迫る
千住真理子 イザイ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会<完全版>
日時:2024年12月20日(金) 19:00
会場:Hakuju Hall
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2108/

千住真理子 デビュー50周年記念企画


◆千住真理子のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/marikosenju/

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