2014/3/20
ニュース
エフゲニー・キーシン、大絶賛を浴びたカーネギーホール公演
ニューヨークでのキーシンといえば、1990年のNYフィルに続いてのカーネギー・ホール・デビュー以来、ファンのハートをがっちりと捕まえて放さない。私も毎年2月頃に発表される次のシーズン(10月から5月頃まで)のカーネギーの定期演奏会のお知らせでは、真っ先にKeyboad Virtuosos(鍵盤の巨匠)シリーズでキーシンが演奏する日とプログラムをチェックして、カレンダーにシッカリ書きこんでおく。
さて、今シーズンのキーシンは3月10日8時からのリサイタル。早々とチケットは完売となり、前日にはステージの上に約100席の椅子が用意された(ちなみにステージ席のチケットは175ドル!)約2800席の満員の聴衆が見守る中、開演時間から10分ほど遅れて、キーシンが颯爽と舞台に現れた。客席とステージの上の聴衆にも丁寧にお辞儀をして、プログラムの1曲目、シューベルトのソナタニ長調、D.850を弾き始めた。この4楽章からなる長大なソナタは、シューベルトが静養のため訪れたオーストリアのアルプスで作曲されたと言われ、31年の生涯であったシューベルトにとっては晩年の作品であるが、躍動感もあり、シューベルトならではの愛らしくシンプルで純粋な美しいメロディーに彩られたいる。キーシンの演奏の緊迫感が客席まで伝わり、客席の隅々まで聴衆が集中して彼の演奏に耳を傾けているのが伝わってくる。特に印象深かったのは最終楽章、小鳥のさえずりや小鹿の群れが駆け巡っている、そんなアルプスの山道を楽しそうに散策している情景が浮かんでくるような、ウィットに富んだ演奏だった。舞台席を確保した友人の後日談によると、キーシンも歌いながら演奏していたそうだ。
休憩を挟んで、後半はスリャービンの楽曲に移った。最初は「幻想ソナタ」。カーネギー・ホールの音響の良さをあらためて実感するほど、繊細な音がひとつひとつが響き渡り、ロシアン・サウンドならではの迫力も勿論伝わってくる。続いてのエチュード作品8からの抜粋7曲は、キーシンのナチュラルなメッセージが全開となり、圧巻は12番!息を呑む迫真の演奏に拍手とブラヴォーの嵐、スタンディング・オベーションの興奮のうちにプログラムは終わった。キーシンも満足げな笑みを浮かべ拍手に応えていた。
しかし、ここからがキーシンの演奏会のお楽しみが始まる・・・今年も彼の得意のレパートリーの中からやってくれました満足度100%の厳選3曲。曲目はサプライズで伏せておこう。
来年は5月16日に再びカーネギーホールの舞台を踏む。
針ヶ谷郁(ピアニスト/NY在住)
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キーシンが魅せる、新しい世界
エフゲニー・キーシン ピアノ・リサイタル
2014年05月01日(木) 19時開演 サントリーホール
2014年05月04日(日・祝) 15時開演 サントリーホール