2025/1/21
ニュース
〈RMF&山田和樹 グローバル プロジェクト〉山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団 記者会見
山田和樹が音楽監督を務めるバーミンガム市交響楽団(以下、CBSO)の日本ツアーに先駆け、1月16日に記者会見が開催されました。
冒頭にジャパン・アーツ代表取締役社長の二瓶純一より、山田和樹の紹介と、CBSOの日本ツアーについての概要説明がありました。
山田は2018年よりCBSOの首席客演指揮者、2023年4月より首席指揮者を務め、2024年5月に音楽監督に就任。サイモン・ラトル、サカリ・オラモ、アンドリス・ネルソンス、ミルガ・グラジニーテ=ティラら歴代の音楽監督が築き上げてきた名声を引き継ぎ、オーケストラと一体となって新たな時代を開拓しています。CBSOのほか、2016/17シーズンからはモンテカルロ・フィルの芸術監督兼音楽監督を務め、今年6月にはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期公演への客演が決定。今回のCBSOとの日本ツアーはその直後とあって、さらなる話題を呼びそうです。
6月末から7月にかけて行なわれるツアーでは、シェク・カネー=メイソン(チェロ)、河村尚子(ピアノ)、イム・ユンチャン(ピアノ)という、今をときめく3人のソリストを迎え、全国で8公演が予定されています。うち4公演は「RMF&山田和樹 グローバル プロジェクト」の一環として開催されるとのこと。会見ではこのプロジェクトについて、ローム ミュージック ファンデーション(以下、RMF)事務局長の竹内善行氏より説明がありました。
「RMFは長年にわたり音楽家の育成事業に力を入れて参りました。この事業を通して関わった音楽家の皆さんを、我々は“ローム ミュージック フレンズ”と呼ばせていただいておりますが、そのおひとりである山田さんとともに、日本の音楽家が世界中で活躍できる未来を作るために立ち上げたのが、“RMF&山田和樹 グローバル プロジェクト”になります。
今回のCBSO日本ツアーにおいては、“RMFシート”という学生の皆さまのための特別割引席をご用意するほか、日本の若手音楽家のCBSOへのゲスト参加企画、ローム ミュージック セミナーとして山田さんによる指揮クラスなどを予定しています」
続いて、山田がリラックスした表情で登壇。CBSOの魅力やツアーに向けた抱負を語りました。
「僕も45歳になって、自分の役割は“けしかけること”だと思っています。音楽の世界ではひとりに光が当たりはじめると、すべての注目がそのひとりに集中することが往々にしてありますが、僕は若い頃からそれがすごくイヤだった。なぜなら面白くないから。たしかに今、自分はコピーロボット(分身)がほしいと思うほど忙しい日々ではありますが、すべてを僕だけがやっていたんじゃダメなんですよ。ほかの方にやっていただかなくてはならない。そう考えて、CBSOでもいろいろなことを“けしかけて”います」
CBSOの楽員とは家族のような関係で、毎日が楽しくて仕方ないと語る山田。しかし一方で、バーミンガム市の財政破綻により、市からの補助金がゼロになり、オーケストラは大変な状況にあります。
「通常、音楽監督がオーケストラと一緒に過ごす時間は、多くても1年に9〜10週間ほど。けれど僕とCBSOとの契約では1年に最低14週間、実際には18週間ほどを一緒に過ごしています。そうなるともう、監督とオーケストラは家族と同じ。うまくいくときもそうでないときもありますが、バーミンガムの人たちのポジティブな気質に助けられていつもハッピーです。僕は世界でいちばん幸せな指揮者は自分であると本気で思っていて、その思いは公演を重ねるごとに深まっています。
あるときは、ツアーがキャンセルになってぽっかりスケジュールが空いたため、“CBSO in the City”という無料イベントを行なったこともありました。僕はトラム(路面電車)のなかで電子ピアノを弾いたり、ショッピングモールでフルオーケストラを指揮したり、のべ1万人ぐらいの方々に聴いていただき、新たなお客さんとの出会いの場となりました」
今回のツアーのプログラムとソリストについては、次のように語りました。
「2023年の日本ツアーではエルガーの交響曲第1番を演奏しましたが、今回もイギリスものを取り上げたいと思っています。とくにご注目いただきたいのが、ヘンリー・ウッド編曲による《展覧会の絵》。ウッドさんは今日BBCプロムスとして知られる“プロムナード・コンサート”の創始から長年指揮者を務めていた方で、この《展覧会の絵》はもっとも有名なラヴェル編曲版よりも前に編曲されたもの。とにかく編成が大きくて、日本に持って来られない鐘をどうしようか考え中です。プロムスで演奏したときは、楽員からの提案で、最後にオルガンと一緒に楽員たちが叫んだんですよ。そういう愉快なオーケストラです。
今回は3人のソリストとご一緒しますが、イム・ユンチャンさんと演奏するラフマニノフのピアノ協奏曲第4番は、夏にプロムスでも演奏する予定です。シェク・カネー=メイソンさんは音楽一家の生まれで、英国王室のセレモニーでも演奏するなど、イギリスでは非常に有名なチェリスト。実際どのような音楽を奏でるのかと思っていましたが、共演したら大変素晴らしくて、彼の音楽に対する素直さがなにより嬉しかった。河村尚子さんとは、2016年のCBSOとのはじめての日本ツアーでもラフマニノフを共演しました。もうソウルメイトのような存在です」
記者からの質疑応答でも当意即妙なやり取りが行なわれ、最後に「日本ツアーでもっとも楽しみしていることは?」との質問にはこのように答えてくれました。
「それは盛大なパーティでしょう。CBSOのみんなはパーティ大好きで、つねに出席率100%。夜通し飲んでいたいですね。オーケストラは社会の縮図といいますが、バーミンガムのみんなの明るさを世界に伝えたい。そのために、バーミンガムにしかできないことを考える日々です」
文:原典子(音楽ジャーナリスト)
写真:松尾淳一郎
【公演概要】
<RMF&山田和樹 グローバル プロジェクト>
山田和樹指揮 バーミンガム市交響楽団
主催:公益財団法人 ロームミュージックファンデーション/ジャパン・アーツ
特別協賛:ローム株式会社
2025年
6月30日(月) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール
ショスタコーヴィチ:祝典序曲 イ長調 Op. 96
エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 Op. 85 [チェロ独奏:シェク・カネー=メイソン]
ムソルグスキー(ヘンリー・ウッド編曲版):組曲「展覧会の絵」
7月1日(火) 19:00 サントリーホール
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op.18 [ピアノ独奏:河村尚子]
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 Op. 64
7月2日(水) 19:00 サントリーホール
ショスタコーヴィチ:祝典序曲 イ長調 Op. 96
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第4番 ト短調 Op. 40 [ピアノ独奏:イム・ユンチャン]
ムソルグスキー(ヘンリー・ウッド編曲版):組曲「展覧会の絵」
7月5日(土) 15:00 ロームシアター京都 メインホール
ショスタコーヴィチ:祝典序曲 イ長調 Op. 96
エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 Op. 85 [チェロ独奏:シェク・カネー=メイソン]
ムソルグスキー(ヘンリー・ウッド編曲版):組曲「展覧会の絵」
(チケット申込)ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212 www.japanarts.co.jp
<来日公演 その他の日程>
6月28日(土) 15 :00愛知県芸術劇場コンサートホール (問)CBCテレビ事業部 052-241-8118
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第4番 ト短調 Op.40[ピアノ独奏:イム・ユンチャン]
ムソルグスキー(ヘンリー・ウッド編曲版):組曲「展覧会の絵」
6月29日(日) 14 :00兵庫県立芸術文化センターKOBELCO (問)芸術文化センタオーチケットオフィス0798-68-0255
ショスタコーヴィチ:祝典序曲 イ長調 Op. 96
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18 [ピアノ独奏:河村尚子]
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 Op.64
7月4日(金) 19 :00アクロス福岡シンフォニーホール (問)アクロス福岡チケットセンター 092-725-9112
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第4番 ト短調 Op.40[ピアノ独奏:イム・ユンチャン]
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 Op.64
7月6日(日) 14 :00横浜みなとみらいホール (問)神奈川芸術協会 045-453-5080
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第4番 ト短調 Op.40[ピアノ独奏:イム・ユンチャン]
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 Op.64