2025/1/22
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注目!ヴァイオリニスト弓新&大江馨がケルン・ギュルツェニヒ管団員として来日ツアーに参加!
いよいよ来月に日本ツアーを予定するサカリ・オラモ指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団。なんと、国内でも大活躍のヴァイオリニスト、弓新さんと大江馨さんが団員としてツアーに参加します。ケルンに拠点を置くお二人にインタビューを行いました。
インタビュー・執筆:宮本明
2月に来日するケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団。日本のヴァイオリニスト、弓新と大江馨がここで一緒に弾いているというのも大きな注目ポイントだろう。日本での活躍ぶりもおなじみの二人。弓はアシスタント・コンサートマスター(独stellvertretender Konzertmeister=副コンサートマスター)、大江は第2ヴァイオリン首席奏者を務めている。
弓「ギュルツェニヒ管は、ドイツっぽくないというか、サウンドがあまり重くない。すごくクリアで、声部がくっきりと聴こえるというのが、僕がここで初めて弾いた時の印象です」
大江「そのすっきりさに、ふわっとした温かみもあって。僕は白木のようなイメージを感じています」
弓「ヴィブラート少ないよね」
大江「うん。そこは前音楽監督のフランソワ=グザヴィエ・ロトさんの影響だろうね」
弓「客演で来た指揮者が、もっとヴィブラートをかけるように要求する時もあるんですけど、長年かけてないからか、あまりかからなくて(笑)。オーケストラのサウンドとして、それが定着しているということなのでしょう」
大江「それと、僕がこのオーケストラですごく好きなのは、柔軟さ。指揮者が何をやっても、たとえそれがかなり奇想天外なアイディアだとしても、やってみようという姿勢があります」
来日公演を率いるのはサカリ・オラモ。2025/26シーズンから同団の「アーティスティック・パートナー」のポストに就くことも発表されている。
大江「2023年に客演に来た時の評判がとても良くて、メンバーからも、『また来てほしい』という話をよく聞いていました。弓くんはその時に乗ってたんだよね?」
弓「うん。シベリウスの交響曲第5番。僕がこのオーケストラに初めて参加したのがそのコンサート。本当に素晴らしくて。ロトさんだとわりと線的なサウンドの作り方になるのですが、オラモさんだと筆で描いたようなテクスチュアに変わる。そういうサウンドを引き出してくれたことが新鮮だったのだと思います」
ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団は1827年創設の名門。ブラームスやマーラー、R・シュトラウスのいくつかの作品の初演オーケストラとしても音楽史に名を刻んでいる。来日プログラムのマーラーの交響曲第5番も、1904年にこの楽団が初演した作品だ。
大江「楽しみです。当時の楽譜がライブラリーに保存してあったりしないんですかね?」
弓「当時使ったパート譜とかね。あったら面白いね」
大江「前監督はマーラーもヴィブラートをかなり控えめにしていました。ある意味新鮮ですが、マーラーの時代はそれに近かったのだと思いますから、当時の伝統に回帰したとも言えます。それを経て、今回またオラモさんという、この先一緒にやっていく新たなパートナーがどんなふうに調理してくれるのか。非常に楽しみなところです。
弓「このオーケストラはピアニッシモが本当にピアニッシモなんです。ピアニッシモをどう弾くかというのが染み付いている。そういう、ロトさんと約10年にわたって培ってきたものと、さっき大江くんが言った“白木”のイメージに、オラモさんが引き出す肉太なサウンドがプラスされるんじゃないかなと、すごく期待しています。マーラー、うまいと思いますよ」
究極のピアニッシモと肉太の線。第4楽章のアダージェットなど、まさにそういう音楽だろう。楽しみしかない。
協奏曲のソリストは諏訪内晶子と藤田真央。
大江「僕は小学生の頃、コンクールで弾いたブルッフのヴァイオリン協奏曲を、諏訪内さんのCDを何百回も聴いて勉強した思い出があるんです。だから今回、個人的にも、とても楽しみです」
弓「藤田さんはヨーロッパでも飛ぶ鳥を落とす勢い。2月に、日本公演のプログラムと同じシューマンの協奏曲で初共演して(サカリ・オラモ指揮)日本へ行きます」
もうひとつ。見逃せない聴きどころが、ウェーバーの《オベロン》序曲だという。ギュルツェニヒ管はケルン歌劇場のオーケストラとして年間約160公演を行なっているオペラ・オーケストラでもあるのだ。
弓「劇場のオケなので、やっぱりオペラの序曲なんかはひとあじ違うと思うのですけど、うちはシンフォニー・コンサートでは意外とそういうレパートリーをやらないんですよね。もっとやったらいいのにと、いつも思っています。
僕が子供の頃、ゼンパーオーパー(ドレスデン国立歌劇場)の来日公演で聴いた、それこそウェーバーの《魔弾の射手》の序曲がめちゃめちゃうまくて。ああ、これがオペラのオーケストラかと思った記憶があるんです。すごく楽しみです」
取材中に二人揃って、「とても楽しみ」と繰り返すのがうれしかった。奏者自身が楽しんでいることが伝わってくる演奏は私たち聴き手を幸せにしてくれる。古豪オーケストラから新たなサウンドを引き出すサカリ・オラモとのフレッシュなコンビネーションにも大いに期待しながら、来日を待とう。
弓 新(ゆみ あらた)
1992年生まれ。2011年ヴィエニャフスキ国際コンクールで最年少ファイナリストに贈られる特別賞を受賞したほか、2018年にはロン=ティボー国際音楽コンクールで第5位に入賞し、大きな注目を集める。2020~23年北西ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター。2024年シーズンからケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団の副コンサートマスター(契約団員)。
大江 馨(おおえ かおる)
1994年生まれ。2019年レオポルト・モーツァルト国際ヴァイオリン・コンクール第3位ならびに委嘱作品賞受賞、同年アントン・ルービンシュタイン国際コンクール第2位、2013年日本音楽コンクール第1位。2023年4月から神奈川フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター(現在も客演として兼務)。2024年3月からケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団第2ヴァイオリン首席奏者。
円熟の巨匠&欧州の古豪オーケストラが豪華ソリストと共に贈る薫り高い響き
サカリ・オラモ指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
2025年2月9日(日) 所沢市文化センター ミューズ ☆
2025年2月10日(月) サントリーホール ☆
2025年2月11日(火・祝) ザ・シンフォニーホール ★
2025年2月12日(水) サントリーホール ★
2025年2月13日(木) 東京オペラシティコンサートホール ☆
2025年2月15日(土) 豊田市コンサートホール ★
2025年2月16日(日) 横浜みなとみらいホール ☆
☆藤田真央 ★諏訪内晶子
◆ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団のアーティストページはこちら
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/gurzenichorchestrakoln/
◆諏訪内晶子のアーティストページはこちら
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/akikosuwanai/
◆藤田真央のアーティストページはこちら
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/maofujita/