2025/4/16

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【海外公演レポート】ラハフ・シャニ指揮ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団 アムステルダム公演

ラハフ・シャニ指揮ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
アムステルダム公演レポート 2025年4月3日 デ・ドーレン大ホール

2018年、ラハフ・シャニがロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任した瞬間から、彼とオーケストラの間には特別な相性の良さが感じられた。当時シャニはわずか27歳で、同楽団がこれまでに迎えた首席指揮者の中でも最年少。2013年、バンベルクで開催された権威あるグスタフ・マーラー指揮者コンクールで優勝し、ダニエル・バレンボイムを師と仰ぎながら、指揮者・ピアニストとして既に大きな注目を集めていた。2016年6月19日、彼は初めてロッテルダム・フィルに指揮者として招かれる。

そして、すべてはその6月の1回のコンサートから始まった。シャニは2018年から2026年までの契約を結び、ダニエル・バレンボイムとピアノでデビュー・コンサートを行った。その後、彼は数えきれないほどの卓越した演奏を重ね、しばしば自らピアノを弾いている。その音楽的洞察と深さ、驚異的な記憶力、そして天性のリーダーシップは、レビューでも常に高く評価されてきた。バランス感覚とニュアンス、厳しくも尊敬に値するプロ意識、誠実さ、洗練されたセンス、エネルギー、そして即興的なひらめきが、オーケストラの持つ最高の力を引き出している。

シャニは、細かく支配するタイプの指揮者ではない。信頼に満ちたタクトで演奏者に自由を与え、時には音楽に身を任せるようにさりげなく身体を揺らし、要所では優雅なジェスチャーで的確に合図を送る。音楽そのものの中から自然と完璧なバランスを引き出す彼の指揮は、そのエネルギー、決断力、知性と同様に、周囲を巻き込む魅力にあふれている。中でも、マルタ・アルゲリッチとの共演は圧巻で、しばしばピアノ・デュオを披露している。

2025年4月3日、シャニはロッテルダム・フィルを指揮、韓国のトップ・ヴァイオリニスト、クララ=ジュミ・カンをソリストに迎えて、ベートーヴェン交響曲第2番、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲、モーツァルトの交響曲第39番の作品を演奏した。

カンは4歳でザハール・ブロンに師事し、5歳でハンブルク交響楽団と共演、7歳でジュリアード音楽院のドロシー・デレイに史上最年少で合格、12歳でダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団と共演を果たしている。2010年インディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールで優勝、以後、世界中の名だたるオーケストラや指揮者と共演。ヴィルトゥオーゾとしての卓越した技巧とエレガンスで聴衆を魅了し続けている。

プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番の知的で堅実、そしてほぼ完璧な解釈には、何かが少し欠けているように感じられたが、ハープ、クラリネット、フルートといった楽器との間の音楽的な「会話」は素敵だった。
今回のプログラムは、一般的な「モーツァルト→プロコフィエフ→ベートーヴェン」という流れをあえて逆にし、ベートーヴェンから始まり、プロコフィエフ、そしてモーツァルトで締めくくるという意外性のある構成だった。
冒頭に演奏されたベートーヴェンの交響曲第2番は、古典派のハイドンやモーツァルトの伝統から、革命的な音楽語法へと移行する様式の転換点を象徴する作品だ。作曲されたのは1801〜1802年、まさにベートーヴェンが『ハイリゲンシュタットの遺書』を書くなど、深い苦悩と向き合っていた時期である。それでもこの交響曲には、活力とユーモア、そしてエネルギーが満ちている。荘厳な序奏ののち、シャニとオーケストラは、鋭いコントラストと意外性に富んだアレグロを生き生きと描き出した。続くラルゲットは、牧歌的で夢見るような時間がゆっくりと流れ、気まぐれなスケルツォではベートーヴェン特有の皮肉とユーモアがシャニの手で巧みに強調される。フィナーレでは、当時「手に負えない」と評されたほどの激しさと自由さが炸裂し、全体をエネルギッシュかつダイナミックに締めくくった。
モーツァルトの交響曲第39番変ホ長調 KV543では、シャニとオーケストラはより洗練され、説得力ある響きを実現した。冒頭のドラマティックなエレガンスから、アンダンテ・コン・モトのソウルフルなメランコリーへと自然に展開。第3楽章では、土俗的なユーモアを交えつつメヌエットに命を吹き込み、終楽章では見事な対位法により、モーツァルトの天才的な技巧が余すことなく発揮された。シャニは、音符をなぞるのではなく、音楽の流れそのものを導くような指揮で、この壮麗な交響曲を、まるで天と地の間を軽やかに舞うように響かせた。

ウェネケ・サフェネイエ Wenneke Savenije
「De Nieuwe Muze」編集長

≪公演情報≫
世界を席巻する若き巨匠シャニ、熱狂を再び!
ラハフ・シャニ指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2124/
2025年6月21日(土) 14:00 ザ・シンフォニーホール ♦
2025年6月22日(日) 15:00 愛知県芸術劇場コンサートホール ★
2025年6月23日(月) 19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール ♦
2025年6月25日(水) 19:00 福井県立音楽堂 ハーモニーホール福井 ♦
2025年6月26日(木) 19:00 サントリーホール ♦
2025年6月27日(金) 19:00 サントリーホール ★
2025年6月28日(土) 14:00 横浜みなとみらいホール ★
2025年6月29日(日) 14:00 所沢ミューズ アークホール ♦
[ソリスト:♦ブルース・リウ(ピアノ) ★庄司紗矢香(ヴァイオリン)]


⇒ ラハフ・シャニのアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/lahavshani/
⇒ ブルース・リウのアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/bruceliu/
⇒ 庄司紗矢香のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/sayakashoji/
⇒ ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/rotterdamphilharmonicorchestra/

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