2025/4/17
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庄司紗矢香が韓国でモーツァルトを熱演!
写真提供:ソウル・アーツ・センター
庄司紗矢香、モーツァルトの核心に迫る
― オーケストラ・フェスティバルで鮮烈なデビュー ―
取材・執筆: Hur, Myeong Hyun
ヴァイオリニストの庄司紗矢香が、ソウルで開催されたシンフォニー・フェスティバルで鮮烈なデビューを飾った。
韓国各地のオーケストラが1か月にわたり日替わりで出演するこの大型クラシック音楽祭で、庄司はKBS交響楽団とともにモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番を演奏。指揮はイラン・ヴォルコフが務め、聴衆の心を揺さぶる感動的な演奏を披露した。
冒頭の音から、彼女が圧倒的な音楽家であることがはっきりと伝わってきた。揺るぎない技術と音楽的な成熟は一瞬で明らかになり、なぜ多くの指揮者やオーケストラが彼女との共演を望むのか、その理由を実感させられた。
とりわけ印象的だったのは、その音楽の成熟度だ。ダイナミクスの幅が際立って広いわけではなかったが、その音は繊細で、綿密に練り上げられていた。録音では見落とされがちな細部のニュアンスや微妙な変化が、コンサートホールの空間の中で鮮やかに浮かび上がる。すべてのフレーズは意図をもって丁寧に形づくられており、音量だけでなく音色のコントロールにも卓越したセンスを感じさせた。とりわけ第2楽章では、音楽の感情的な流れが見事に描き出され、作品の奥行きと繊細さを浮き彫りにした。音楽は緻密でありながら自然体で、ひとつひとつのフレーズが美しく、自然に締めくくられていく。それを感じ取った聴衆の多くが、静かな微笑みを浮かべていたのが印象的だった。
写真提供:ソウル・アーツ・センター
演奏全体からは、モーツァルトの精神がにじみ出ていた。スタイルだけでなく、音楽の本質を捉えた演奏だった。とくに第2楽章ではその傾向が顕著で、モーツァルトの音楽に備わる表現力と劇的な性格が見事に生きていた。このオペラ的な要素は、声楽作品に限らず、彼の器楽作品全般に通じており、庄司の解釈はそこに光を当てていた。フレーズごとに異なるキャラクターが登場し、それぞれに鮮やかな表情が与えられていた。高音域の音色にわずかな硬さを感じる場面もあったが、音楽そのものには豊かな表情と個性が息づいていた。
庄司のヴァイオリンは「歌って」いた。そしてKBS交響楽団の伴奏はその歌に寄り添い、演奏全体にオペラ的な要素をより一層際立たせていた。この効果を高めたのが、指揮者イラン・ヴォルコフの手腕だ。彼は『エフゲニー・オネーギン』などを手がけてきたオペラ経験の豊富な指揮者であり、そのフレージングとドラマの構築力は随所で光っていた。
庄司の演奏には、驚くほどの自然さも漂っていた。表現のすべてが自然に、無理なく流れ出ており、何ひとつ作為を感じさせなかった。それはまるで映画における長回しのように、カットのない一続きの情景を見ているかのような感覚を与え、音楽の中に没入させてくれた。モーツァルトの協奏曲に込められた情熱、ユーモア、哀愁といったあらゆる感情を捉えつつ、それらをまったく違和感なく行き来する自在さがあった。その自然さは、彼女の卓越した技術の証でもある。シンコペーションの扱いにも細やかな感覚と正確さがあり、それをあまりに軽やかにやってのけるさまには驚かされる。
もはや「神童」のイメージにとどまらない――庄司紗矢香は今、真の巨匠への扉を開きつつある。
⇒ 庄司紗矢香のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/sayakashoji/