2014/5/14

ニュース

  • Facebookでシェア
  • Twitterでツイート
  • noteで書く

インタビュー:ハンガリー国立フィル 音楽総監督・指揮 ゾルタン・コチシュ

ゼネラル・マネージャーに続き、ゾルタン・コチシュのインタビューをお届けいたします。

ゾルタン・コチシュ

 ハンガリー国立フィルの音楽監督に就任されて以来、最も大きな挑戦が課されたと思われることはどのような点ですか?
 「オケのリニューアルです。2000年に楽団員全てに対してオーディションを課しました。その際インターナショナルな審査員を招いて行い、結果として残念ながら何人かは解雇いたしましたが、その後 皆、更に勉強するようになったのです。
私はピアニストでもあるので、コンサートがなくても1日最低3時間は練習します。それは同じ状態を保つための最低時間ということで、何か到達しなければならない課題があれば、その上に練習時間を積み上げていきます。夏の休暇中でも同じです。それは音楽家として当然のことなのです。」

ハンガリー国立フィルの音楽作りにあたり、どのような事を目指していらっしゃいますか?また、どんな事に重きをおいていらっしゃいますか?
 「私にとっての最重要点は特性です。それは創造力よりも時として重要です。例えば私は作曲家でもあるので、シェーンベルグの未完成オペラ『モーゼとアロン』の3幕を完成させ世界初演を実現させました。シェーンベルグの作曲法は特別なものがあり、可能性を沢山内包しています。そして3幕の幕開けに使うはずだったモチーフはスケッチブックに書かれてあったので、シェーンベルグ自身の歌詞を使い、スケッチブックにあったその他の3つのモチーフも加え、1、2幕と同じ様式を使って、彼のオーケストレーションを用いて完全に違うものを作ったのです。ここで必要だったのは特性を理解する事で、新しいものを創造したわけではありません。演奏もこれと同じで、その音楽の特性を追求することが大切なのです。」

 今度共演するソリスト金子三勇士さんは、幼い頃、コチシュさんに憧れてピアニストを目指しました。コチシュさんもピアニストでいらっしゃいましたが、ピアノ協奏曲の指揮をされるとき、どのような気持ちで指揮をされますか?
 「自分がピアニストとしてその楽譜を読み砕いたことを全て忘れ、ソリストのサポートに100%まわるようにしています。指揮者とソリストにはエピソードが沢山ありますが、グレングールドとバーンスタインのエピソードを知っていますか?グレングールドの、細部までじっくり弾くゆっくりなテンポに、忍耐力の限界を感じたバーンスタインに対して「誰がボス?」とグレングールドが一言。もちろんソリストが主人公なのです。カラヤンとポゴレリッチのように、やはりゆっくりなテンポのポゴレリッチにカラヤンが共演をご破算にしたという話も残っています。
私はあくまでもソリストの力になりたいと思っています。」

 もう一人のソリスト千住真理子さんについての印象と、日本、名古屋のお客様のイメージは如何ですか?
 「千住さんはYoutubeで聴いただけですが、素晴らしいソリストだと思います。日本のお客様は規律正しくて、音楽を熟知していますので、楽章の合間に拍手が起こってしまうというようなハンガリーでしなければならない心配もないので安心です(笑)。名古屋のお客様は情熱をもって聴いて下さるという記憶があり、音響が素晴らしいコンサートホールと共に印象に残っています。日本は皆様とても親切で、毎回訪日すると「家に帰って来た」ような気分になります。そして日本を離れる時は毎回とても悲しくなるのです。」

中 東生(在スイス / 音楽ジャーナリスト)

インタビュー:ハンガリー国立フィルのゼネラル・ディレクター
https://www.japanarts.co.jp/news/p955/


輝く真珠! ドナウの名門
ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団
[公演日程]
6月23日(月) 19:00 サントリーホール
指揮:ゾルタン・コチシュ ピアノ:金子三勇士
6月26日(木) 19:00 サントリーホール
指揮:小林研一郎 ヴァイオリン:千住真理子
⇒ 公演の詳細はこちらから

ページ上部へ