2014/5/20
ニュース
ミハイル・プレトニョフ、イタリアでシューマンのピアノ協奏曲
ミラノのヴェルディ交響楽団、ローマのサンタ・チェチーリア管弦楽団などと共にイタリアを代表するオーケストラの一つ、イタリア放送協会(RAI)交響楽団の2013~2014年のコンサートシーズンもほぼ終わりになった5月15、16日に、ミハイル・プレトニョフをソリストに迎えたコンサートが本拠地のイタリア放送協会のトスカニーニ・ホールで行なわれた。
プログラムはシューマンのピアノ協奏曲イ短調Op54と、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。
指揮は同オーケストラ首席指揮者のユライ・ヴァルチャワ。
筆者が聴いた16日は、ほぼ満席の入りで、若い人たちが多かったように感じられた。やはりこのアーティストに対する期待は大きい。また当夜の演奏は、ラジオFM第3放送でも生中継された。
さてプレトニョフのシューマンだが、一般に考えられるロマン主義音楽の演奏とはかなり違ったものであった。具体的にはかなりゆったりとしたテンポが目立ったのだが、彼はこの曲へのアプローチとして、「この曲はロマン主義の作品であるから、こういう演奏でなければならない」という、言わば外枠から規定していくのではなく、スコアを勉強しながら発見していった個々の音や和音、フレーズといった要素を一つ一つ追求していったようだ。その結果として、このようなゆったりとしたテンポの演奏になったのだと思われる。この傾向は全3
楽章を通じて感じられ、フィナーレまで一貫していた。細かい点を見れば、個々の音、アルペッジョ、和音がそれぞれ際立った輪郭で描かれている点が魅力であろう。いわば、この曲のこれまでとは違った新たな面を発見する機会となった。
指揮者のヴァルチャワは、オーケストラのみの部分ではテンポを速め、全体のバランスを保っていたが、それでもプレトニョフの音楽が全体を御している。言い換えれば、演奏全体にプレトニョフの意図が浸透していた。オーケストラの重厚な音質と相まって、全体がはっきりとした個性を持った演奏になっていた。
前日のコンサートではアンコールにショパンのノクターンを演奏し、シューマンに対するのとは全く違った面を披露したようだが、16日にはアンコールは無し。それでも盛大な拍手を浴びていた。
野田和哉(音楽ジャーナリスト)
—————————————
ついに復活!ロシア・ピアニズムの巨匠
ミハイル・プレトニョフ リサイタル&コンチェルト
<<協奏曲の夕べ>>
2014年05月27日(火) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
<<リサイタル>>
2014年05月29日(木) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール