2014/5/28

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「ウィーン・スタイル」を支える音楽ファミリーの存在 [ザ・フィルハーモニクス]

ザ・フィルハーモニクス

 ザ・フィルハーモニクスの多くのメンバーが所属するウィーン・フィル。このオーケストラの代名詞ともいえるのがニューイヤーコンサートだが、レパートリーの中心であるシュトラウス・ファミリーと並んで、最近毎年のように取り上げられている作曲家がいる。「ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世」だ。
 この人物、ウィーン・フィルのコンサートマスターを務めるかたわら、指揮や作曲にも才能を発揮した。しかも父も祖父も、ウィーンを代表するヴァイオリニストとしてウィーン・フィルを中心に活躍し、ウィーン音楽大学の前身であるウィーン楽友協会音楽院のヴァイオリン科教授として、後進の育成にも情熱を注いだ。
 このように書くと、ウィーンの音楽界では同族支配が大手を振るっていたかのような印象を持たれてしまうかもしれない。にもかかわらず、なぜあえてこのようなシステムが作られてきたのかといえば、一にも二にもスタイルの継承が重んじられたため。ウィーン・フィルの演奏をはじめ、ウィーンの音楽家の演奏の特徴を指して「ウィーン・スタイル」ということがよく言われるが、そのためにも音楽ファミリーの存在は欠かせなかった。
 その昔、ウィーンは中央ヨーロッパに広大な領土を持つハプスブルク帝国の都であって、様々な民族や文化が混在する国際都市だった。ということは音楽の世界においても、ともすれば多種多様なスタイルが雑多に散らばりかねない状況の中、それらを一本化し美しい調和を作るための規範が是非とも必要だった。
 この特徴は現在に至るまで続いている。ザ・フィルハーモニクスはもちろんのこと、ウィーン・カンマーオーケストラのメンバーにも、旧ハプスブルク帝国の領土のそこかしこの出であると同時に、ウィーン・スタイルを身に付けた面々が少なからず見受けられる。そしてウィーン・カンマーオーケストラを指揮するヴラダーや、ザ・フィルハーモニクスのオッテンザンマーのように、代々の音楽ファミリーに連なる人々も…。
 時として「型破り」にさえ見える彼らの新鮮な活動は、実のところこの街に培われたたしかな「型」があってこそなのだ。

小宮正安(ヨーロッパ文化史・ドイツ文学研究家)

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ウィーン・フィル公認の“7人のヴィルトゥオーゾたち”
ザ・フィルハーモニクス
2014年06月20日(金) 19時開演 東京芸術劇場 コンサートホール

ザ・フィルハーモニクス

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