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【インタビューその1】樫本大進と共演/ピアニスト アレッシオ・バックスに聞く!

7月に樫本大進とのデュオ・リサイタルで来日するアレッシオ・バックス。
4月にはサー・アンドリュー・デイヴィス指揮シンシナティ交響楽団の定期公演で、急遽エレーヌ・グリモーの代役に抜擢、ブラームスのピアノ協奏曲第2番を演奏し、世界中の音楽ファンから注目されました。
ソリストとして、室内楽奏者として世界中で活躍する合間をぬって電話インタビューに応じてくれました。2回にわたって記事をお届けします!
先月、シンシナティ交響楽団に代役出演、大成功だったそうですね。
ありがとうございます。エレーヌ・グリモーさんの代役でした。彼女の体調が優れなかったためです。パフォーマンスの数日まえに打診があり、現地のフェスティバルの最後の演目のためアーティストが変わっても演目変更ができない、ブラームスの2番を弾いてくれないだろうかと聞かれました。私は、土曜日にいただいたお話をすぐにお受けして週明けの火曜日にはシンシナティで演奏しました。実は指揮者のルイ・ラングレ氏もお父様のご逝去でフランスに急遽お戻りになり、指揮者&ソリストともに代役でのコンサートだったのです。

たいへんな状況でしたね。
はい。その日は、ブラームスの交響曲第3番とピアノ・コンチェルト第2番、という"オール・ブラームス・プログラム"。第2番コンチェルトは、以前弾いたことがあったことが、幸いしました。

聴衆の反応はいかがでしたか?
とてもいい雰囲気でした。サー・アンドリュー・デイヴィスの指揮は素晴らしかったです。お目にかかったことはすでにありましたが、共演はこれが初めて。でもとても自然に演奏できました。相性がいい同士だと、お互いに感じることができたと思います。シンシナティ交響楽団は非常に豊富なレパートリーを持っていますし、パーヴォ・ヤルヴィ氏など、すぐれた指揮者との経験があります。質の良い演奏ができたと思っています。それから、運営もとても安定していて、よいアーティストを招ぶことに積極的なオーケストラなのです。飛び入り出演といえども安心して仕事ができる環境でした。幸運だったと思います。
日本に来ていただく直前にそのようなニュースがあり、お迎えする私たちにも弾みがつきます。
私も嬉しいです。

7月に日本で演奏していただく演目にもブラームスが入っています。第1番のヴァイオリン・ソナタですが。バックスさんにとって、ブラームスはもうよく馴染んだ作曲家でしょうか、また、このヴァイオリン・ソナタは?
最初から難しいことを聞くんですね(笑)。よくインタビューで「好きな作曲家ですか?」と聞かれますが、好きか嫌いか、は、答えが難しいのです。易しい・・・とか、とっつきやすい、といった観点のほうが、わかりやすいでしょうか・・・つまり、私たち演奏家はキャリアの中で多くの偉大な作曲家の作品に触れていきますが、若い時に「これはほんとうに好きだ。」と思っていても、なかなか繰り返して演奏することにはならなかったり、反対に、しばらくたってからその良さがしだいにわかってきて、繰り返し演奏し、なぜかいつも離れずにいる・・・という作曲家もあるのです。その意味では、ブラームスは・・・「いつも、かならず、居てくれる」作曲家ですね。難しい部分あり、しっくりくる部分あり。でも、つねに理解を呼び覚まし、興味を与えてくれます。

「好み」という言葉が軽すぎるのでしたら、そうですね、どのアーティストにも言葉では表せない「肌合い」のようなものがあるかと思うのですが。素人的な質問ですみませんが、バックスさんはイタリア人でいらして、たとえばイタリアにも膨大な音楽文化の歴史的蓄積があり、その文化を感じ取って成長されたと思います。その目線から、ドイツのロマン主義の代表的な作曲家であるブラームスをご覧になったときに、感じ取られるものはなんなのでしょうか?
個々の表現者のバックグラウンドは非常に多様なもので、国籍という一つの要素で語りきれるものではありません。演奏家の場合はどこでそのトレーニングを積むかにも多くを負うています、もちろん、生まれた国の要素はそれは、抜きがたいものではあるとしても、です。具体的な例を話しましょう。私は最近、マエストロ・テミルカーノフの指揮で、サンクトペテルグルグ・フィルハーモニー交響楽団とラフマニノフを弾いたのですが、最初の音を叩いた瞬間に「なにか」を感じました。非常に特別な・・・おそらく、ロシアの人たちにとってはとても馴染める、なんらかの要素だったと思いますが、私にもストレートに響くなにかでした。またアルゼンチンのテアトロ・コロンで演奏した機会には、私はまだかつて南米大陸の土を踏んだことはありませんでしたが、やはりなにか、 強く感覚に訴えかけるようなものを感じ取りました・・・。

イタリアはオペラなどを生み出した偉大な国ですけれども、ロマン主義のあの時代に、では、イタリア本国の作曲事情はどうだったかと振り返ると、ブラームスのような存在はないわけです。でも私たちにはそれより前にスカルラッティがいて、ヴィヴァルディがいて・・・という状況でした。
演奏者がなにかを感じて表現する・・・そのことは、狭い意味でのバックグラウンドには縛られません。かのアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリや、指揮者のアルトゥーロ・トスカニーニ、さらにはマウリツィオ・ポリーニ氏などをみれば、いわゆる「イタリア人」という枠を超えている人たちは、多くいるものだと思いますし、音楽に関して言えば、ある美しさや特徴に私たちが感応するきっかけというのは、具体的な国籍や経験を土台にしつつも、それが抽象化されたレベルで受け皿となっているものによると思います。

インタビュア:高橋美佐

次回は日本のこと、プログラムや得意な料理などについて伺います。お楽しみに!
インタビューその2はこちら

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歌う弦、きらめくピアノ あたたかく共鳴しあうデュオの真髄
樫本大進&アレッシオ・バックス
2017年7月12日(水) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール

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