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[ウィーン少年合唱団] 2019年5月 東京公演初日公演レポート(Bプログラム)

5月4日(土・祝)14:00開演 サントリーホール4月末から日本ツアーをスタートさせたカペルマイスターのマノロ・カニン先生率いるブルックナー組。今年は「日本・オーストリア友好150周年記念プログラム」と題して、AとBの2種類のプログラムが組まれています。サントリーホールでの2日目となる5月4日の「プログラムB」公演も、「令和」という新しい時代を少年たちの清らかな声とともに迎えようと、たくさんのお客さまで賑わっていました。開演時刻を迎え、ホール後方のドアから少年たちが登場すると、思わぬサプライズに客席からは喜びの声が。そのまま客席の間の通路を歩いてステージへと上がり、1曲目の《ピエ・カンツィオーネス》より「喜びたまえ」を歌いはじめます。メンバー数人が鳴らす打楽器に合わせて、躍動感あふれる力強いコーラスが響きわたり、マノロ先生も指揮をしながらジャンプ!「みなさ~ん、こんにちは!」というマノロ先生の陽気な日本語での挨拶に続き、2曲目はパーセルの「来たれ、汝ら芸術の子らよ」。2~3人ずつが交代でソロを歌い、メンバーひとりひとりのレベルの高さを感じさせると同時に、全員が声を合わせて歌うときの表現力の豊かさにも驚かされました。

メンバーによる日本語のMCをはさんで、3曲目はアイブラーがウィーン少年合唱団のために書いた「サバの人々は来たる」。少年たちは毎回この曲を歌うのを楽しみにしているそうです。ソプラノの2人がソロをとり、抜けるような高音で見事なロングトーンを聴かせてくれました。「ハレルヤ」と歌うコーラスも晴れやかです。

次からの3曲は、ロマン派を代表する作曲家シューマンの作品が続けて歌われました。「タンバリンをたたく少女」では声でタンバリンの響きが表現され、速いパッセージも一糸乱れぬアンサンブルで歌いこなします。「聖堂」ではまさに「天使の歌声」と呼ぶべきハーモニーが天から降り注ぎ、曲が終わった後もじんわりとした余韻に満たされていました。

ウィーン少年合唱団の十八番とも言えるウェルナーの「野ばら」や、ジルヒャーの「ローレライ」でも、シンプルなメロディがハーモニーの美しさを際立たせます。お互いの声をよく聴き、ひとつに声を合わせて歌う喜びから生まれる妙なる響きの世界。「ブルックナー組はサッカーが上手」とマノロ先生が話していましたが、個の力の連携によって高みを目指すという意味では、合唱に通じる部分があるのかもしれません。そして第1部のラストには、20世紀の作曲家ビーブルの「アヴェ・マリア」。メンバーがステージ全体に広がるフォーメーションにより、現代的な響きに包み込まれるような感覚に。夢見心地のうち、あっという間に前半が終わってしまいました。しっとりと聴かせる曲が多かった第1部から一転、休憩をはさんで第2部はミュージカルや映画でおなじみの歌やポップスも交えたにぎやかなプログラムになります。メンバー2人がトランペットを披露した後、全員が「ア・ワンダフル・デイ」を歌いながら登場。客席の手拍子に応えて投げキッスをしてくれました!

続いて映画《ライオン・キング》より「愛を感じて」とミュージカル《ヘアー》より「レット・ザ・サンシャイン・イン」は、ポップスらしいエッジのきいたリズムを持った曲ですが、少しも間延びすることなく、躍動感たっぷりに歌ってみせるところはさすが現代っ子です。

ミュージカル《ウェスト・サイド・ストーリー》より「サムウェア」は思いっきりロマンティックに。アメリカの現代作曲家エリック・ウィテカーの「アシカの子守唄」は、月夜が照らす夜の海の静謐さと、母なる自然の優しさを感じさせる美しい曲でした。第2部の後半は、日本とオーストリアで愛され、歌い継がれている曲が続きます。まず最初はいきものがかりの「YELL」。リズムに合わせた日本語の発音が完璧で、音だけ聴いたらウィーンの少年たちが歌っているとは分からないほど。音楽と同じくらい言葉にこだわり、訪れる国々の文化を理解しようとする姿勢が伝わってきます。

「歌う親善大使」とも呼ばれるウィーン少年合唱団は、日本の皇室とも深い絆で結ばれています。今回のツアーでは改元を祝してさまざまな曲が用意されていますが、今日のプログラムで披露されたのは、上皇陛下が作詞され、上皇后陛下が作曲された「歌声の響」。両陛下が1975年に沖縄のハンセン病療養所を訪れたことがきっかけで生まれた歌とのことで、メロディにも沖縄を感じさせる音階が含まれています。英語で “Beautiful Harmony” と呼ばれる「令和」の幕開けにふさわしい、清らかで神秘的な響きが印象的でした。日本の歌から「ふるさと」を歌った後は、日本人メンバーのケント君による「ウィーンへ帰ります」というMCが入り、ヨハン・シュトラウス2世による陽気で快活な「トリッチ・トラッチ・ポルカ」「ハンガリー万歳」、そしてラストにおなじみの「美しく青きドナウ」で第2部が終了となりました。

巻き起こる熱い拍手と「ブラボー」の声に応え、アンコールでは映画《サウンド・オブ・ミュージック》より「ドレミの歌」を振り付きで披露。さらにヨーゼフ・シュトラウスの「水兵のポルカ」も。最後に歌ってくれた菅野よう子の「花は咲く」では、東日本大震災の直後から変わらず被災地に心を寄せてくれている少年たちに、感謝の気持ちでいっぱいの拍手が送られました。休憩をはさんで、第2部の1曲目はピアソラの有名曲「リベルタンゴ」。「歌声でタンゴを踊りました」というMCの言葉どおり、歌詞がなく、声だけでリズムやメロディを描き出すアレンジはとても新鮮に聞こえます。

「マノロ先生がいちばん好きな曲」という紹介のあとに歌われた2曲目は、先生の故郷イタリアのカンツォーネ・ナポレターナ「オー・ソレ・ミオ」。海の波のように大きく揺らぐ先生のピアノに乗って、リズムを弾ませ、のびのびと歌う少年たちの表情からは、両者の固い信頼関係が想像できます。ときにユーモアを交えてリードする先生は、少年たちにとってきっとお兄さんのような存在でもあるのでしょう。

第2部の3曲目からは、オーストリアと日本で愛されている歌を取り上げ、両国の絆を示すプログラムとなります。まずは映画《サウンド・オブ・ミュージック》より「ひとりぼっちの羊飼い」と「エーデルワイス」。前者ではやんちゃなヨーデルの掛け合いが楽しく、後者では山あいにひっそり咲く花と同じく素朴で優しい歌声に会場はうっとり。日本の歌からは、滝廉太郎の「荒城の月」、上皇后陛下が作詞された「ねむの木の子守歌」、岡野貞一の「ふるさと」の3曲を。どの曲でも日本語の発音がとても自然で美しく、歌詞の意味をきちんと理解したうえで、ひとつひとつの言葉を大切に歌っているのがよくわかります。

続いて歌われたのは、ウィーン少年合唱団の芸術監督であるゲラルト・ヴィルト氏が、令和という新しい時代を迎える日本でのツアーのために書き下ろした新曲「Peace within(内なる平和)」。MCで告げられた「ひとりひとりが平和であるとき、世界も平和になります」という言葉を、神秘的な静謐さをたたえた響きの中で噛みしめながら聴き入りました。

次の曲からラストまでは、ウィーンにちなんだ歌が続きます。オーストリア民謡の「納屋の大戸」ではトランペットを吹いたふたりが大活躍。少年たちも手拍子や足踏みを交えながら歌います。ヨーゼフ・シュトラウスの「水兵のポルカ」はウィーン少年合唱団の十八番。ヨハン・シュトラウス2世の「雷鳴と稲妻」とともにスピード感あふれる快活なテンポでウィーンの華やぎを運んできてくれました。そして「美しく青きドナウ」で一気にスローダウン、大きな川の流れのようにゆったりとしたワルツで締めくくりとなりました。鳴り止まない拍手に応えて、アンコールも盛りだくさん! 《天使にラブ・ソングを》メドレー、菅野よう子の「花は咲く」を歌ったあと、マノロ先生が腕時計を見て「もうこんな時間!」という顔をしつつも披露してくれたのが、フランチェスコ・サルトーリの「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」。メンバー全員で会場のお客さまに大きく手を振りながらの終演でした。

文:原 典子(音楽ライター/編集者)

[ウィーン少年合唱団] 2019年5月 東京公演初日公演レポート(Aプログラム)はこちらから

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キヤノンマーケティングジャパングループ Presents
ウィーン少年合唱団
5月3日(金・祝)14:00 サントリーホール
5月4日(土・祝)14:00 サントリーホール
5月29日(水)14:00 東京芸術劇場コンサートホール
6月14日(金)13:30 東京オペラシティ コンサートホール(アフタヌーン・コンサート・シリーズ2019-2020 前期 Vol.2)
6月15日(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
6月16日(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
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